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仕掛けらたもの―五十嵐貴久著『For You』

 叔母、吉野冬子の突然の死から始まる。姪の佐伯朝美は映画雑誌の編集記者。韓国スター,フィル.ウォンへ来日取材インタビゥの設定。叔母、冬子の1979年から80年にかけての日記を読む姪の朝美。その25年前の日記の中の冬子と同級生の藤城篤志の高校生活。その中からウォンとの取材設定に仕掛けられていたトリック。それはすがすがしいものとして描写されている。 

For You (祥伝社文庫) Book For You (祥伝社文庫)

著者:五十嵐 貴久
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 高校生活を描いた小説は五十嵐貴久の「1985年の奇跡」につづく書。叔母冬子の日記から性描写も暴力描写もなく、「静岡市の県立高校」「江ノ島に遊び行く高校生グル-プ」「どこかカラッとした受験前」「高校文化祭」など陰鬱な生活でない高校生活が描かれている。そして来日した韓国スター、フィル.ウォンへの取材に悪戦苦闘する朝美。

 単なる青春を描いた小説かと思いきや、最後の仕掛けられトリックには感心しました。朝美のこの台詞が妙に臭くなかった「最後にウォンはこうに言った」「今朝、早く起きた時に見たこの街の美しさを忘れることはないだろうと。一度だけでじゃない。何度も何度も繰り返してそう言った。その朝の美しさを忘れることはないだろうって。それって、つまり...。」

 今から20年前、私の青春生活そのものを歌った『神田川』を聴いたある女の子がこう言った。『おじさん達の青春時代の歌って、ものすごく暗いのよネ』。

その時の時代に受ける風は冷たいものもあれば柔らかいものもある。でもその時に、その風を受けながら出会えたもの、別れていったものは自分の宝としてしまって置きましょう。吉野冬子のように。            

                                《夢野銀次》               

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