« 映画「悪人」「フラガール」-それは『再生』だ | トップページ | 出流山天狗事件の前哨―永野村・村民の蜂起 »

汐灘サーガ/三作品.....堂場瞬一

 堂場瞬一の作品で以前、箱根駅伝を題材とした作品「チーム」をこのブログに載せた。この3年前から無意識に「刑事・鴨沢了」「警視庁失踪課・高城賢吾」「警視庁追跡捜査課」等のシリーズものを断続的に読んできているなと思えてきている。堂場瞬一を意識するようになったのは、10年前の連続殺人からすさまじい刑事たちの対決を描いた「逸脱」という作品だ。久しぶりに一気に読んでしまった作品でもある。ある批評家はこの「逸脱」を堂場瞬一の最高傑作だと絶賛しているのも頷ける作品と思える。

  東京から北に特急で1時間、車で2時間の城址がある県庁所在地の汐灘市を舞台とした「汐灘サーが』の三部作「長き雨の烙印」(2007年11月)、「断絶」(200812月)「夜の終焉」(2009年10月)を連続して読んだ。

 「長き雨の烙印」では幼女強姦未遂事件から冤罪を訴える容疑者、支援する貧しい弁護士。友を救えなかった伊達刑事、殺された娘の復讐にかける父親と過去と現在をからませての作品となっている。

 二部作目の「断絶」では汐灘市にささげてきた政治家剣持隆太郎とその友。そしてその息子の刑事・石神兼が女性の変死体事件をからめて政治家の後継者争いから父と息子の絆を描いている。この書は「政治家の物語だ」と解説している批評家がいるほど、政治に対する考え、姿勢を表している。

 三部作目の「夜の終焉」は交通事故事故で意識不明となった少女の身元を捜すところから始まり、殺人者と被害者の息子同士の確執を捉えた見事な作品となっている。特に最後の病室での息子同士の話は胸を撃つものがあった。加害者の息子・川上弁護士は被害者の息子・真野亮介に意識不明の少女の身元を明かしながら、その母・浅野愛(まな)の死を知らせながら語る「過去を見なくとも生きていける。あるいはみているつもりだ。乗り越えたと自分に嘘をつきながら生きていくことだってできるでしょ。愛さんは、そういうことに疲れたのかもしれない。私にもあなたにも家族はいない。だけど愛さんには娘がいる。あなたに事実を話すことで、私にも、もう一度過去を見詰め直して欲しいと」。父が犯した罪を息子達がどう生きてきたかを捕らえて、息子としての社会への対応を描いた大作だと思う。

 「汐灘サーガ」ってどういう意味なのか?「サーガ」は調べたら、北欧神話に登場するアース神族の女神で、その名前は「何かを見る」あるいは「知らせるもの」を意味するのではないかと記載されていた。三部作に共通する事件の要因となる「未遂事件被害者の幼女・変死体の女性・交通事故で意識不明となった少女」。この三人がサーガ・知らせてくれた女神なのかな。

長き雨の烙印 Book

長き雨の烙印

著者:堂場 瞬一
販売元:中央公論新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

断絶 (中公文庫) Book 断絶 (中公文庫)

著者:堂場 瞬一
販売元:中央公論新社
発売日:2011/07/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する

夜の終焉 上 Book

夜の終焉 下 Book

逸脱 Book 逸脱

著者:堂場 瞬一
販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 

                      《夢野銀次》

|

« 映画「悪人」「フラガール」-それは『再生』だ | トップページ | 出流山天狗事件の前哨―永野村・村民の蜂起 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1233525/41546759

この記事へのトラックバック一覧です: 汐灘サーガ/三作品.....堂場瞬一:

« 映画「悪人」「フラガール」-それは『再生』だ | トップページ | 出流山天狗事件の前哨―永野村・村民の蜂起 »