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出流山天狗事件の前哨―永野村・村民の蜂起

Photo  慶応2年(1866)8月8日の大雨の被害を受け、栃木町の穀商達は米の価格を値上げし、俵売りをやめるとした。

 栃木町から北、約4里の所にある上永野村・下永野村・粕尾村(ともに現在は鹿沼市永野・粕尾)と出流村の4か村の者は板・炭などを栃木町へ売り、その代金で帰路米を買い求めて生活してきた。

 その4か村にとり、米の値のつり上げに加え、俵売りをしない(売り惜しみ)ということは、毎日わずかの米を買いに4里の道のりで通うことになる。この事態に4か村の村民は怒った。

Photo_2  旧日光県文書によれば、慶応2年(1866)8月22日に上永野村・下永野村・粕尾村・出流村の村民800人が永野川上流の本河原に沌集し、栃木町に襲撃しようとした。この事態に栃木町組合寄場に属する星野村・鍋山村・梅沢村・大久保村・尻内村5か村の名主・組合頭が説得に努め、一端は治まったかに見えた。しかし、永野村から大越路峠を超えた粕尾村は、はずさていたため、8月25日の夜、再度本河原に村民が沌集した。

(写真は永野川上流の旧粟野町下永野付近の河原)

 

Photo_4一方の栃木町では永野村など4か村の村民が襲撃して来るとの情報が入り、避難する騒ぎとなった。2か月前の6月に起こった武州一揆による豪農・穀商屋への打毀しの風聞が知れ渡り、この町へ波及してくることの恐れ。さらに栃木町民には2年前、元治元年(1864)6月5、6日の水戸天狗党(田中愿蔵の部隊)による栃木町焼打ち事件「愿蔵火事」の記憶が今だに残っていた。この時には栃木陣屋による交渉の失敗で焼き打ちがおこり、その焼打ちに対して陣屋側は栃木陣屋内に籠もったままに何の対応をしなかったからだ。 栃木陣屋は町民を守らないということを町民側は知っていた。だから避難騒ぎとなった。(写真は満福寺の西側。右隣りが栃木陣屋跡地。史跡表示はありません)

Photo   こうした事態に、4か村と同じ領主(武蔵国金沢米倉丹後守)の野州に聞こえた豪農である皆川城内名主大総代幸嶋彦助が永野村本河原の沌集地に赴き、一揆側に相応な救済措置を講ずることを約定したため、8月26日の朝に事態は沈静化した。

  沌集した村民の中に、白筒袖割羽織の者2名が采配を振っていたと前述の旧日光県文書に書かれてある。誰であろう?

 稲葉誠太郎著「水戸天狗党栃木町焼打事件」の中に、この永野村村民蜂起事件の後の8月28日の夜、栃木町中町の高札場に張許文が貼られたことが書かれてある。穀商と栃木陣屋側が大雨による被害でも米があるにもかかわらず、売り惜しみ・便乗値上げを謀ったことへの告発文である。

Photo  この「永野村村民蜂起事件」の翌年の慶応3年12月に「出流山天狗事件」がおこる。落合直亮著「薩邸事件略記」によれば160名で出流山満願寺で討幕挙兵した「出流山糾合隊」には下野から77名の農民・博徒が参加し、別の資料では永野村から30名、粕尾村から20名の百姓の二男、三男が参加したと記述されている。実に糾合隊の3分の1を占めていたことになる。この中に白筒割羽織を羽織った者がいたことは推測できる。(写真は出流山満願寺)

 時代は天保7年(1836)の甲州世直し騒動から従来の訴願・交渉による一揆から暴力(打毀し)を用いる一揆へと変貌してきた。慶応2年6月の武州一揆の中の田無では農民銃隊による一揆勢攻撃などがおこり、領主に対する百姓へのお救いを求める時代ではない幕末一揆世直し騒動の時を迎えていた。

 「愿蔵火事」「永野村村民蜂起」を経て、栃木町の町民の間に銃を含めた武器の調達と所持がおこる。栃木陣屋は一応は権威のための武器調達・所持の禁止のお触れをだしたが、町民による自衛の動きとなっていく。さらに」「出流山天狗事件」の際に関八州出役と共に農民同士による戦闘が岩舟町新里・岩船山で起こり、幕末歴史の展開は下野世直し一揆と広がっていくことになった。

                           《夢野銀次》

 

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