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市川崑『おとうと』-栃木・蔵の街かど映画祭

044 「普段の映画館と違う雰囲気で映画や蔵の街を楽しんでもらおう」と、5月19・20日に第5回目の『栃木・蔵の街かど映画祭』が開かれた。会場は栃木市内にある『見世蔵』や有形文化財の『栃木高校講堂』『岡田記念館』などを使用した14会場で30作品の映画が上映された。運営は市内の団体、商工会などを中心としており、チラシに記載されている協賛・協力20、参加運営団体12と地域をあげての規模の大きな映画祭となっている。地域活性化の意味から職員総出で会場受付等、栃木信用金庫が力を入れたり、東武鉄道における車両広告など協賛・協力の輪の広がりが見え、『やっているな』と感じた。

043  『蔵が伝える明日への想ひ』というキャッチフレーズ。蔵の内部のミニシアター。30席の会場内を見て、若い時、民家の店舗を借りて、私の最後の演出で仲間と芝居を上演した会場のことを思い出した。

  栃木市内にある見世蔵を活用しての映画上映。誰が考えたのか。関係者の一人に聞いたら「栃木市内で撮影の協力、エキストラをしているとちぎフイルム応援団ではなかったかな」と言っていた。

Pwfxiybj1  見世蔵会場の一つ『太田蔵』において昭和35年(1960)キネマ旬報ベストワンの市川崑監督『おとうと』を観た。映画初の「銀残し」とういう手法を使い、暗さと明るさの輝度差をつけた作品でもある。そのため岸恵子演じる姉「げん」の表情は眼と顔の色彩が異様なほど強度を増していた。

 結核で亡くなる放蕩のおとうと「碧郎(へきろう)」の若い川口浩、作家の父親の森雅之、リュウマチで手足が不自由で愚痴をこぼす継母の田中絹代。さらに懐かしい俳優、仲谷昇、岸田今日子、伊丹十三と演技派を揃えた作品になっている。

  ばらばらでいがみ合いを続ける家族。しかし、おとうと「碧郎」の死を迎える時、看取る家族は一つになっていく。

 

Otohto1_5 山田洋次監督「おとうと」は市川崑監督「おとうと」をまね、捧げる作品として作っている。病室のベットでリボンを結ぶ姉と弟。自分の父親も晩年がそうだったように厳格な父が柔和な父親になり、碧郎が神様に近づいたことを知る母親。そして放蕩なおとうとと多事多難な葛藤をしながら、最後まで看病する姉の「げん」の岸恵子。万引きに間違えられ怒るげん、おとうとにヒステリーで噛みつくげん。姉さんだなと感じた。大正時代の日本のどこか暗い家屋と明るい障子の光。茶の間で食事をするちゃぶ台。どれも丁寧にリアルに描いた作品だと改めて感じた。そしてラスト、貧血を起こした「げん」が立ち上がる。「お母さん休んでいて」と言いながらエプロンをして、ごみごみした看護婦の控え部屋から出ていくシーン。何気ないシーン。何気ない日常を写すのは「太平洋ひとりぼっち」のラスト、堀江青年役の石原裕次郎が浴槽から出ていき、残った「浴槽に残る垢の汚れ」と並ぶラストシーンを連想し、市川崑の世界だなと改めて感じた。

046  市川崑の「おとうと」、病院内の撮影は栃木市にある「栃木病院」で撮影されたと、ずっと以前に知人から聞いていた。そのため、今回の映画祭で上映されたのかなと思い、関係者に聞いてみた。しかし、撮影されたかどうかは分らないということだった。改めて知人に電話で聞いてみた。「間違いない。当時にニュ―スになった。また仲谷昇が岸恵子に言い寄る神社のシーンは第二公園だよ」と返事が返ってきた。栃木病院の外観の映像が出てくれば確信がもてるが、内部は忘れた。今度、風邪を引いたら、栃木病院に行き、内部を観てくるつもりだ。

051 帰り、途中の中田蔵では高校生が運営するシアターを見かけた。「満員」とういう垂れ幕があり、受付をする女子高校生の顔が誇らしげだった。上映作品は「書道ガールズ」。まだ観ていない映画だったことに気が付いた。

 この映画祭、全体の会場が14だがメイン会場が分からなかった。おそらくゲスト豊島圭介監督が来る「栃木高校講堂」だったのかもしれない。できればオープニングは栃木文化会館などで開き、誰でも知っている監督や山口智子などの女優が参加しての開催だったならば、さらに知名が広がる映画祭になるなと感じた。費用で一番かかるのは「上映権」だという。地域での街をあげての映画祭においては「上映権」を考慮することも映画界は必要でないかと思えた。

                            《夢野銀次》

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