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次につなぐものある?―映画「桐島、部活やめるってよ」

Images1  「この映画、何なのだろう?」と一度目のDVDを観た時の印象。二度目は「なるほどなあ」と少し頷いた。そして三度目は「俺たち時代の学園映画と違うな」との感想を受けた。

  昨年(2012年)の映画祭を総なめした「桐島、部活をやめるってよ」。吉田大八監督、脚本喜安浩平ともいずれも知らない監督脚本家だった。日本アカデミー最優秀作品、キネマ旬報ベストワン等、賞をとるまでまったく知らなかった作品。

  8月公開で口コミで観客が増加し、6か月以上にロングランとなったと言う。わくわく、どきどきする映画ではない。考える映画。だから何回か観る映画なのかなと思えた。

Kirishima5_large1 バレー部のエース「桐島」が部活をやめるという情報から「桐島」とか関わっているバレー部の久保孝介と小島風介と女子マネージャー。桐島の彼女、梨紗(山本美月)とその友、沙奈(松岡茉優)。バスケをしながら桐島が部活の終わりを待つ菊池宏樹(東出昌大)、竜太(落合モトキ)、友広(浅香航大)たちらのあわてふためく動揺の姿を描く。

  一方では「桐島」とは関わっていないバトミントン女子のかすみ(橋本愛)と実果(清水くるみ)。宏樹を慕う吹奏楽部の部長の沢島亜矢(大後寿々花)。顧問先生の勧める作品ではなく自分達の映画を撮ろうと撮影を始める映画部の前田涼也(神木隆之介)と武文(前野朋成)。ドラフトまで部活動を続ける野球部キャプテン(高橋周平)等自分を見据えている者達。

   こうした登場人物を通して金曜日から月曜日にかけて同じ時間軸をそれぞれの違った視点で何度も追うという新しいスタイルで描いた作品として評価されている。そのためなのか違う視点で同じ場面を描いているので映画が立体化しているように感じた。

Kirishima16_large1 にぎやかな高校生活。しかしそこには部活をしながら、己の限界が徐々にわかってくる生活でもある。「桐島」は全国選抜に選ばれるバレー選手。しかし大多数の選手は違う。バトミントンの実果は同じペアを組むかすみの腕の筋肉をさわりながら「亡くなった姉のようなバトミントン選手にはなれない」と悩む。

 ドラフトが終わるまで野球部活動を続けるキャプテン。たとえスカウトが来なくても続ける。トップアーティストになれるのはほんの一部の者であることが判ってきても続ける。 

  屋上で憧れの宏樹の姿を見ながらサックスを吹く沢島亜矢。映画部と撮影場所の言い争いをしながらサックスを吹くことに専念しようとする。宏樹にけじめを付け、練習でしっかりと吹奏した後の充実感を味わう亜矢の表情は美しい。 

Kirishima12_large1_2  桐島を追って屋上に上がってきた者達と屋上で撮影中の映画部員との争いが起こる。馬鹿にされた映画部員はゾンビのとなって争う姿が映し出される。争いが終わる。宏樹から8ミリカメラを受け取りながら涼太が「オレたちが好きな映画と今、自分たちが撮ってる映画がつながってるんだなって思う時があって、それが、こうなんか」と語る。たとえアカデミー監督なんかになれなくても、次へ進んでいく涼太の想いの言葉となっている。一方の宏樹は野球部をやめて、放課後バスケをしながらただ桐島を待っている生活。涼太が映すカメラ越しの宏樹の表情は泣いている。次を見つけることの出来ない己の悲しさなのかと受け止められた。

Main2_large1_2  ラストの校舎の屋上。赤い夕日がバックに映っていた。~赤い夕日が校舎を染めて 楡の木陰に弾む声 ああ高校3年生 僕ら離れ離れになろうとも クラス仲間は何時までも~。と夢に弾む青春映画とは違う。「美しい幻想は消えてこそ価値がある」(吉本隆明)。否応なしにこれからは「桐島」のいない世界が待っていることを「ゾンビ」で具象化して現している。

 映画の主題歌「陽はまた昇る」(作詞作曲唄、高橋優)の中に ~移ろい行く人の世を さんざめく時代を 憂いて受け入れて 次はどこへ行く 愛しき人よどうか君に幸あれ たとえ明日を見失っても 明けぬ夜なないさ~。とある。誰かを頼って判断する生活はやがては失うという現実。次をつなげていくものを見つける。たとえそれが一つだけでなくとも良い。将来のことは判らないが、今何をするかを見つけて、次につなげていく。「桐島」を待っていても自分の世界には来ない。「次につなぐもの君にあるかな?」と問いかけてくる。肩に力を入れないで観る映画だ。

                                《夢野銀次》

《追記》

 NHKテレビ「あまちゃん」にはこの作品登場した俳優さん達が多くでていたな。橋本愛、東出昌大、松岡茉優等。もっといたかもしれない。

 

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