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2014年8月

カエルの石像がある湧水池―栃木市「丸沼長瀞公園」

Photo_3  「昭和55年頃、ここに(今泉一丁目)に越してきた時、カエルの鳴き声にびっくりしたわ。牛みたいにモウ、モウとそれは鳴き声が凄かったのよ」と以前に従姉妹が語ってくれていた。

  「モウ、モウ」と鳴くカエルは赤ガエルに属する食用ガエルの「ウシガエル」ではないかと思える。湿地帯や沼地に生息するカエルだ。このあたりにはたくさんの赤ガエルやウシガエルが生息していたのだ。

  公園の一番奥にある湧き水のある湧水池。地下水がボコボコと湧いている。その脇に水神社とカエルの石像が鎮座する「丸沼長瀞(まるぬまながとろ)公園」。東武日光線新栃木駅から東方、約2キロにある栃木市今泉一丁目と大宮町との境目に公園がある。近くには大宮北小学校や大宮城址である大宮神社もある所だ。

Photo_4   湧き水は公園内4カ所からポンプによって汲み上げられ、丸沼・長瀞を辿りながら県道44号線栃木二宮線(通称小金井街道)の脇を通り、赤渕川になってうずま川に流れ注いでいる。

   鎮座する1メートル四方のカエルの石像の台座裏側にはこう彫られてある。「奉納 これは平成6年度より行われた丸沼長瀞水盾環再生下水道モデル事業に依り 以前から丸沼中央の島にあった水神社を現在地に移転安置したものである

 平成6年11月吉日

 今泉町生活環境整備対策委員会 会長秋間恒一他有志一同」

   カエルがたくさん生息した丸沼。沼の中央にあった島に水神社があったのだ。「カエルは水神さまを守っているのか?それとも沼の主としてのカエルを供養するために建立したのか?」と勝手な想いをしてみた。いずれ地元の古老からお話しを聴いていきたい。

Photo_5  カエルの石像に彫刻されている「丸沼長瀞水循環再生事業」は平成19年度に環境省がまとめた「環境用水の導入事例集」全国47カ所の事例の中で紹介されている。

  水環境改善の事例集の冒頭で、環境省は自治体担当者向けにまとめたと記述している。「社会経済の変化を背景に、水環境が急激に変化し、河川や湖沼の水質汚濁、生態系への悪影響、湧水の枯渇、河川流量の減少、親水性の低下など問題が生じた。このため環境基準の設定、排水規制、生活排水対策などを講じた結果、水質が向上し、また、環境整備により水辺地の環境が改善した地域がある」とし、「問題が引き続き顕在化している水域も存在し、これらの地域では水環境の回復を行い、魅力ある水環境づくりが求められている」と指摘を行い「主に自治体が管理する河川、水路や用水など身近な水域を対象に、河川、水路、用水など水環境を改善し、よりよくするための一手法である環境用水の導入事例についてまとめたもの」と主旨を記述している。

  北は北海道から青森、富山、東京三鷹市、九州など全国47カ所、水環境改善実施例の紹介事例が記載されている。その中で「栃木市丸沼長瀞公園」は栃木県で唯一の事例紹介として扱われている。栃木市在住の私にとり誇りに思えた。

049_2  この事例紹介の中で丸沼近辺の歴史が書かれてある。「丸沼長瀞公園は戦後30年代ごろまでは、こんこんと清水が湧き、満々と水をたたえた沼地及び数十町歩に及ぶ、水田を潤す用水掘であり、夏は子供の水遊びの場として親しまれていた」とかつての様子が記述されている。

  今泉町に実家のある私の友人は当時(昭和30年前後)の丸沼のことを「夏は私たち子供の水遊びの場所だった。広い丸沼の真ん中には中州(島)があり、そこにいくのには沼がとても深かったことを憶えている。中学生でそれを感じたのだから。小金井街道が左に大きくカーブする鯉沼商店の前あたりの水辺が子供たちの一番の水遊びの場所だった。水はとても澄んでいたわね」と往時を振り返って語ってくれた。

Photo_10  事例には「昭和50年代から住宅戸数の増加により地下水は下がり、生活雑排水が流入し悪臭を放つなど環境悪化の沼となる。昭和56年(1981)の末に今泉町生活環境整備対策委員会が中心となり周囲の自治会とともに住民の署名を集め市当局に環境改善の陳情を行った」と記述されている。その後も、住宅は増え続け、かつての丸沼・長瀞の清流はますますどぶ川と化し、付近の人たちは寄り付かなくなり、荒れ放題となってしまっていたとしている。

  そして陳情から13年後の平成6年(1994)から9年度(1997)にかけ、国土交通省と栃木市の共同事業として「水循環再生下水道モデル事業」として丸沼長瀞公園の整備工事が開始された。開始された経緯については事例に記載がなく分からない。かつての丸沼長瀞の姿を取り戻すことを目標に整備工事が始まり(初期費用3億6千万円)、平成9年に湧水からの導入が開始され整備工事が終了したとしている。

Photo_7  整備後の特徴として、沼の水と生活排水を分離するため長瀞の脇に整水溝を造り、生活排水をそこに流入させている。また湧水が不足していたため、公園内に地下水を汲み上げるようにしたとしている。これは以後の栃木市における巴波川や県庁掘川の整備工事にも見られてくる。

  事例には整備後の公園の維持管理について特徴点をあげている。「平成9年の事業完成時において、地域住民の要望で整備が行われたため維持管理を市と分担することになった。地域住民による『管理委員会』が設置され、市と公園管理内容を分担し、委託契約を締結した。内容は栃木市は水路清掃、ポンプ・修景施設点検、植栽メンテナンスを行う。住民の管理委員会は清掃、除草、草花植え込み管理となっている。この委託契約は平成14年度から栃木市が制度導入しているアダプト制度のさきがけとなった」と事例には記述されている。今でも従姉妹は毎月一回自治会の除草作業に参加している。 

Photo_12   ここに出てくる「アダプト制度」とは何か?ネットで調べていくと、英語では「養子縁組をする」という意味合いがあり、公共財を地域で引き受けるといったい意味合いの制度。つまりは行政が、特定の公共財(道路、公園、河川など)について市民や自治会・域団体やNPO法人などと定期的に美化活動を行うよう契約する制度のことをいうことが分かった。

  この「アダプト制度」で栃木市が美化活動を取り組んでいる公園・河川のことが知りたく、8月18日、栃木市役所の担当課である河川緑地課を訪ねた。「コピーはご遠慮ください」とアダプト制度を契約している公園河川と地域団体が記載されている一覧表を窓口で渡された。ノートに公園名を筆記した。平成25年度は28公園、33団体と4名と最終集計表に記載されている。 

Photo_14  「第二公園、うずま公園、栃木市総合運動公園、永野川緑地公園。皆川城址公園」など地域団体と美化運動を取り組んでいることが分かった。しかし、「?」無いのだ。丸沼長瀞公園の名前が。「一覧表に記載がないことは契約をしていないことです」との答えだ。「環境省の事例集が間違っているのですか?」と尋ねると「年度が19年度ですから、そのままなのですね。役所のネットではよくあることですよ」との答えだ。市担当者にインターネットで環境省事例集の「丸沼長瀞公園」を打ち出してもらい、文面の確認と環境省への問い合わせを要請した。「公園維持管理制度、アダプト制度のさきがけと記載されているから、モデル事業として記述したのでしょう」との答えだった。その時は「さきがけなのか」と頷いたが、どうも市職員の姿勢にしこりが残った。
  環境省水・大気環境局水環境課が全国の自治体担当者向けに発信している「環境用水の導入事例集」の中の『栃木市丸沼長瀞公園』記述の中において、「住民側とアダプト制度委託契約をしていない」と簡単に否定されたのだ。話をしながら市担当者は事例集を初めて見たことがわかる。
「地域住民と協働でつくる街づくり」を鈴木俊美市長が掲げている。「アダプト制度」は地域住民と市側と協働事業の最先端のとりくみだと思えるのだが、残念な気がした。今も毎月一回、除草作業を続けてきている。環境省が地域住民と共に維持管理をしていることを全国に紹介し、高い評価を行なっている「栃木市丸沼長瀞公園」。委託契約をしていなければ「丸沼長瀞公園管理委員会」と再度委託契約を市側から働きかけていくべきではないかと思えたのだ。

Photo 栃木市街地を流れる巴波川と思川の間には杢冷川(もくれいがわ)や赤渕川が流れている。このあたり、都賀町・家中・合戦場・大塚・総社・大宮・今泉・平柳・仲仕上一帯は古代から沼地・湿地帯だとされている。小倉堰から西方・都賀を流れる思川は右にカーブして壬生から流れてくる黒川と合流し、小山を通って渡良瀬川に合流していく。その思川が右にカーブする金崎付近から総社にかけて古代、思川は氾濫し右岸南にあたるこの一帯に濁流となって流れ込むことがたびたびあったと考えられる。その濁流が伏流水となり湧き水となり湧水池、川となって流れているのではないかと思えてくる。

  丸沼長瀞公園の湧水も思川の伏流水から生まれてきている湧き水なのだと思う。丸沼長瀞公園からの湧き水は赤渕川に合流する。赤渕川は農業用かんがい排水事業として整備され、巴波川に注いでいる。

  湧き水はずーと昔からの歴史を私に語ってくれる。丸沼の湧き水を見て、これからも栃木市周辺に今も残る湧水地や沼を訪ねていこうと思っている。                         

 ≪関連リンク先・環境省了承済≫

 環境省「環境用水の導入」事例集~魅力ある身近な水環境づくりにむけて

 18 栃木県 栃木市丸沼・長瀞公園

 

                                          《夢野銀次》

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