« 5年目で柿が実った―さつまいもの収穫 | トップページ | 収穫の10月―里芋・落花生の天日干し »

ハーモニーで綴るTBS金曜ドラマ「表参道高校合唱部」

Yjimage1  「地球にはハーモニーが必要である。こうして歌っていると、もしかしたらこのハーモニーで世界に奇跡を起こすかもしれない、なんて思ったりする。だから私は今日も歌う」と主人公、香川真琴(茅根京子)のナレーションで「表参道高校合唱部」第10話の最終回で終わる。

  TBS系金曜テレビドラマとして夜10時から平成27年7月15日から9月25日まで10回に渡り放映された作品。このドラマをネット配信で観ることができた。

  東京・原宿の表参道にある「表参道高校」が舞台の青春学園ドラマ。かつて合唱の名門校であった同校の合唱部は部員不足から廃部寸前になっていた。そんな中、香川真琴が香川県小豆島から転校してきて、部員の募集、呼び掛け、退廃的だった合唱部を立て直す。合唱の奏でるハーモニー、歌の力で仲間との出会いを描く、楽しくなるドラマになっている。そして何よりも忘れていた歌の魅力を思い起こしてくれた作品になっていることだ。

B150723_0021  《第1話》 「知っとるか?歌の語源はうったえる。ほんまの気持ち、声で伝えて歌うんや。ええか、合唱では仲間外れは許されん。全員が全員の為に歌う。それでやっとひとつの歌声になるんやから」と音楽時間に小学生の真琴に諭す鈴木有明(城田優)教育実習生。合唱に加わわり歌うことの素晴らしさ説く。東京から小豆島に転校してきて、クラスになじめなかった真琴が合唱と出会う場面になっている。

 ドラマは冒頭、10秒ジャンプしながらスポットを浴びた真琴の独白から始まる。「合唱とはいくつかのパートを複数人で同時に歌うことを意味する言葉である。地球にはハーモニーが必要である」と人との和が語られる。バックには桟橋で見送る小豆島高校の合唱部の「涙そうそう」の歌声が流れている。ドラマ全体に流れるメッセージとして受け止めるシーンでもある。

2015072200085828lisn0003view1 ~夜に堕ちたらここにおいで 教えてあげる最高のメロディ あなたはいつも泣いてい るように笑っていた (中略)  あたしだけの秘密の場所 夏のにおい追いかけて あぁ夢はいつまでも覚めない 歌う風のように…~ (「OverDrive」歌:JUDY AND MARY/作詞:YUKI/作曲:TAKYA/1995年)

  裏切ろうとした引田里奈(森川葵)は「♪ここにおいで」と舞台で歌う合唱部の歌を聴き、客席から立ち上がり口ずさみながら檀上に昇り合唱部に合流する。里奈は歌う。「♪歌う風のように~」と笑顔の里奈の歌声が講堂全体に透きとおるように響き渡る。ネットの中の世界から人前で歌うことの喜びを表している場面。とってもいい。歌詞と里奈の気持ちが合唱となって流れてくる。こうした歌は縁もゆかりもない私にとって、合唱曲として抵抗なく聴くことができた。

2015072700086501lisn0001view1  《第2話》 「私は今のままの合唱部なら歌えない。仲間を裏切ったままで、いい合唱になんてなるはずないから」と真琴は一人で歌いだす。

 濡れ衣を着せられ閉じこもる幽霊合唱部員の宮崎裕(高杉真宙)を引き戻すため家の前の路上で「♪いまわたしの願いごとがかなうならば翼がほしい」と歌いだす。合唱部員も合流し、「♪この背中に鳥のように 白い翼をつけてください この大空に翼をひろげ 飛んで行きたいよ 悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ 行きたい」(「翼をください」/歌:赤い鳥/作詞:山上路夫/作曲:村井邦彦/1971年)

  「翼」とは人への信頼、自分自身の拠り所、居場所などが浮かんでくる場面。「悲しみのない自由な空へ」…。「閉塞感」の漂う現代社会に飛び立つ「翼」とは何なのかを問われてくるシーンで胸が熱くなった。

  このシーンについて日刊スポーツコラムで森川葵氏が専門的にこう記述している。「最初に真琴が主旋律をソロで歌い、後でやって来た里奈が主旋律を引継ぎ、真琴が低音ハモリに自然に切り替える。この切り替えがあまりにスムーズで、絶妙なハーモニーを奏でている。(合唱部員)そろって合唱したところは鳥肌モノ」と絶賛している。

  70年代初頭に生まれた「翼をください」。今なお歌い続けられている意味は大きいと思えてくる。歌の持つ意味を考えていこう。

34335tbs_07312015_omote_news1  《第3話》 退部をかけて野球部の紅白試合に出場する桜庭大輔(堀井新太)。事情を知った真琴ら合唱部は、大輔の好きな岡本真夜の「TOMORROW」を応援歌として合唱する。

 ~涙の数だけ強くなれる アスファルトに咲く花のように 見るものすべてに おびえないで 明日は来るよ 君のために~

(「TOMORROW」/歌:岡本真夜/作詞:岡本真夜・真名杏樹/作曲:岡本真夜/1995年)

  球場に響き渡る「TOMORROW」のハーモニーは改めて合唱の魅力を引き出している。「明日は来る」ことの確信を受け取ることのできるシーンとして描かれている。素晴らしいシーンだ。しかし、高校野球の試合で応援曲「TOMORROW」をまだ球場で一度も聴いたことがない。どこかの高校で使用しているか、注視していこう。

2015081700089190lisn000view1  《第5話》 離婚した父はホームレスになっている。父を慕う谷優里亞(吉本実憂)はタレントになるため、その父を他人だと突き放す。しかしオーデイション会場前の路上で合唱する「トレイン トレイン」を聴き、父を慕う気持ちを思い出し、正直になろうと走り出す。故郷に帰る父を見送に行くために。走る姿は歌詞と重なり応援したくなるシーンになっている。

  ~栄光に向かって走る あの列車に乗って行こう 裸足のままで飛び出して あの列車に乗って行こう (中略) 見えない自由が欲しくて 見えない銃で撃ちまくる 本当の声を聞かせておくれ Train-Train 走ってゆく

 Train-Train 何処までも Train-Train走ってゆく Train-Train何処までも

(「Train-Train」 歌:ブルーハーツ/作詞作曲:真島昌利/1988年)

  公園でホームレスの優里亞の父と真琴の父雄司(川平慈英)の会話の中で「娘への気持ちは覚めない恋だから」という台詞にドキッとした。このドラマは「歌を忘れた中高年」に向けたドラマになっていると思えてきた。

20150822020311  《第6話》 合唱部と共に歌い終えた大曾根校長(高畑敦子)は「簡単なことだったのね。あの人が歌えないなら、その分を私が歌えばいい。あの人が歌った歌はそこにある」と合唱部員の前で語る。

 亡き夫と共に歌った「心の瞳」を再び歌うことができたことへの想いが出てくるシーンだ。

 ~心の瞳で君を見つめれば 愛すること それがどんなことだか 分かりかけてきた 言葉で言えない胸の暖かさ 遠回りをした人生だけど 君だけが 今では愛の全て 時の歩み いつもそばで分かち合える たとえ明日が少しずつ見えてきても それは生きてきた足跡が あるからさ (中略) 心の瞳で君を見つめれば (「心の瞳」/歌:坂本九/作詞:荒木とよひさ/作曲:三木たかし)

  ドラマの中で高畑敦子が「坂本九さんの遺作よ」と「心の瞳」を真琴に紹介する。九ちゃんではなく九さんと語るところに坂本九への想いがでている。私は知らなかった。「心の瞳」が合唱曲として広く歌われている坂本九の遺作であることを。最後に残していたのかと驚き、改めて坂本九への感謝の念が湧いた。

2015090600091830lisn000view1  《第7話》 廃部寸前だった合唱部がコンクールに出場することになる。選んだ曲が「ハナミズキ」。心臓手術で意識が回復しない夏目快人(志尊淳)が好きな曲であり、彼の回復を願い、入賞を目指し合唱する。

  ~手を伸ばす君 五月のこと どうか来てほしい 水際まで来てほしい づぼみをあげよう 庭のハナミズキ 薄紅色の可愛い君のね 果てない夢がちゃんと 終わりますように 君と好きな人が 百年続きますように

  (「ハナミズキ」/歌:一青窈/作詞:一青窈/作曲マシコタツタロウ/2004年)

  この曲には「君と好きな人が百年続きますように~」というように全ての人がずっと平和で暮らせるようにという願いが込められているという。ハナミズキの花言葉は「私の想いを受け取ってください」。意識の戻らない快人に合唱部員の「想い」がコンクール会場に響き渡る。「ドラマ開始当初はほとんど合唱したことのなかったいうキャスト達が日々のトレーニングを重ね、成長してきた」との評価がネットで記載されている。

2015082000089578lisn000view1_2  ドラマは第10話の真琴の両親が「愛の歌」の合唱で離婚することなく、表参道高校で合唱を続けて行くところで終わる。

  梅田恵子は日刊スポーツ「梅ちゃんねる」(8月18日配信ネット)で「(表参道高校合唱部は)実際、歌声は視聴者の心をつかんでいる。視聴率は5%前後で推移しているものの、視聴者満足の高さは夏のドラマの中でも群を抜く」と高い評価をしている。さらに高成麻衣子プロデューサーの言葉引用し「声を和するとか、仲間を信じるとか、今の時代に足りないものが合唱にある。メールとSNS、アプリを通したコミュニケーションがちょっと息苦しくなってきた時代に、生の声のやりとりというアナログコミュニケーションの力を再認識したいタイミング」と合唱を通してのドラマ作りに高い評価をしている。

 合唱には、「自分の気持ちを伝える」「仲間と声を合わせる喜び」「ハーモニーは新鮮な音楽空間を創る」「共に喜びを味わう機会を得る」「相手の声を注意深く聴く」「合唱する仲間は聴き手である」「とても参加しやすい」「上手く歌えなくても優しく包み込む懐の深さがある」「人の声での協和音は気持ちがよいもの」という要素がある(清水敬一著・監修「必ず役立つ合唱の本」より)。テレビドラマ「表参道高校合唱部」は合唱の持つハーモニーによって生きることへの喜びを如実に表現したドラマであると思えた。

  「表参道合唱部」を観ながら、流れてくる合唱曲はずーと以前から続いている歌に感じられた。ジャンル別に区分けされている音楽の世界ではない、底辺に流れる音楽の道標を示していると思えてきた。現在の音楽を「意味不明、分からない」「うるさい」など拒否をしないで、向き合っていくつもりだ。ただし、いいなあと感じた曲だけにする。

1280x720uph1_3  香川真琴役の茅根京子は吉永小百合の日活青春時代の映画を思い出してくれた。土臭さをもった女子高校生の役を演じている。顧問の鈴木有明先生に曲のアレンジを頼むシーン等、自然体の演技が微笑ましく清々しさを感じ、観ていて気持ちがいい。

  また引田里奈役の森川葵は1話の暗い女子高生から「♪風のように~」を歌いだすシーンは印象深い。そして4話における「原宿まつり」ステージでの「学園天国」の冒頭の“アー・ユー・レディ”という掛け声はグッとくるタイミングを披露している。茅根京子とあわせて森川葵も注目していきたい。

 夜の10時代の放映。青春学園ドラマとしているが、やっぱり中高年が涙流して、歌を聴きながらドラマを観るような気もする。それでも良い。温かくなるドラマは貴重だ。素晴らしいドラマありがとう。

≪参考引用資料本≫

清水敬一監修「必ず役立つ合唱の本」(株式会社ヤマハミュージックメディア、2013年2月発行)

                                   《夢野銀次》

|

« 5年目で柿が実った―さつまいもの収穫 | トップページ | 収穫の10月―里芋・落花生の天日干し »

映画・テレビ」カテゴリの記事

映画・演劇・舞台」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1233525/62144840

この記事へのトラックバック一覧です: ハーモニーで綴るTBS金曜ドラマ「表参道高校合唱部」:

« 5年目で柿が実った―さつまいもの収穫 | トップページ | 収穫の10月―里芋・落花生の天日干し »